告諭を味わう④ 「空」という世界観(1) 「空」「無自性」「縁起」
家を建てる時、一番気を使うのが基礎です。基礎がしっかりしていなければ、見た目が華麗であっても、地震や水によって家は歪み傾き、人は住めなくなります。逆に基礎をしっかり作っておけば、贅沢な建物でなくても、何十年も住み続けることが出来ます。同じように、世界観がしっかりしていなければ、人が羨むような生活を送っていても、足をしっかり地につけて生きることはできません。財産や名誉など、揺れ動く基礎では生き方も揺らぎ続けます。一生住む家を建てるなら、どのような地盤でも、地形でも、気候でも、しっかり家を支える基礎でなければなりません。
人間もまた、この世界で一生生きる以上、歪み傾かないためには、しっかりとした世界観を持つ必要があります。
宗教は、自分が生きるしかないこの世界で自分が生きるしかないこの生命の問題を扱います。生きるべき世界のあり様がはっきりしていなければ、そこでどのように生きたら良いのかが曖昧になります。
ですから、宗教は、それぞれ独自の確固とした世界観を持っています。
宗教に限らず科学でも、理論が通用する世界を成り立たせる物理法則が必要です。
仏教、特に大乗仏教の基本的世界観は、「空(くう)」と言います。
「空」とは、「無自性(むじしょう)」すなわち「あらゆる物は自性を持たない」という意味です。「自性」は物質固有の本質のことです。固有の本質とは、他からの影響を受けない永遠不変の実体のことです。
仏教では、この世界のあらゆる存在は、常に変化してとどまることがないと考えます。それは、永遠不変の実体が無いからです。
もし、永遠不変の実体があったとしたら、それ自体で存在が成り立ち、他の物質の影響を受けず、単独であり続けます。宇宙とともに誕生するのはたった一つの実体です。それは変化も分離も複製もありません。星も地球も生命も誕生しません。永遠不変の実体が無いからこそ、ここに私たちが存在しているのです。
では、どのようにこの世界が成り立っているのかといいますと、「縁起(えんぎ)」によって成り立っていると仏教では考えます。「縁起」は「因縁生起」の略で、原因(因)や条件(縁)が複雑に絡み合い、関係を作り、相互に影響しあってこの世界は成り立っていると考えます。一文字で「縁」とも現します。
この世界の全てのものは、お互い関係しあわなければ存在できません。人間も同じです。今、ここに私が存在するのは、とてもこの頭では思いも及ばないスケールの縁のはたらきによるものです。私たちは、自分自身一人の力で生きているのではありません。無量とも思える諸々の存在によって生かされているのです。
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